CORAL DX-7の記事の第3回目です。メンテ(というかクリーニング)は終わりましたので内部の詳細の紹介などモロモロです。
前回記事は以下になります
・CORAL DX-7、メンテナンスその1
・CORAL DX-7、メンテナンスその2
前回はツイーターとウーファーを中心にした記事でした、今回はあらためて各ユニット紹介と組み立てですが、ネット上ではDX-7をあまり詳しく説明しているサイトがありませんので多数の画像でがっつりと解説したいと思います。X-VIIをお持ちの方も参考になると思います。こういうときにまとめて画像を撮って記事にしないとデカく重いのでなかなか機会がありません。
ウーファーはカタログスペックでは31cm、型番は12L-49。コーンはコルゲーション入りで固めで且つ重いですが、エッジやダンパーは柔らかめです。エンクロージャーに収めてコーンを弾くとボヨンと軽くはずみます。
なぜ30cmじゃないかというと当時の時代背景から30cmクラスの箱にライバル機よりも1cmでも1mmでも大きくというのがセールスの上で重要だったわけで、特にNS-1000Mよりもちょっと大きいというのが重要です。こういうのはTRIO LS-505(33cm)、ONKYO M6(31cm)、PIONEER S-180(32cm)あたりでも見られます。DX-7/X-VIIのウーファーも実際に計測するとエッジ外周はだいたい265mmでNS-1000Mとほぼ同じなんですよね、フレームはざっくり測るとCORAL DX-7(含む:X-VII)の方がフレームが+1〜1.5cmほど大きいです。なのでNS-1000MにDX-7/X-VIIのウーファーの流用はできません(やろうと思う人はいないと思いますが)。
ウーファー背面です。マグネット径は160mmでこのクラスの30cmウーファーとしては割と標準的なサイズです。ちなみにマグネットサイズもNS-1000Mよりもちょっと大きいです(NS-1000Mのマグネット径は156mm)。一方、X-VIIのウーファーのマグネットはDX-7よりもグっと小さく、おそらく120〜130mm前後ではないかと。なのでX-VIIのカタログにはマグネットサイズは言及されていないです(都合の悪い事は書かない!)。
スコーカーです。ダイアフラムのカタログサイズは9cm、ちなみにここもNS-1000Mよりもちょっと大きいです(NS-1000Mのスコーカーのカタログサイズは8.8cm)。X-VII系のMg-Cu添加超硬質軽合金ダイアフラムにサファイアに近い高度の厚膜で内外面を表面処理を施したものとなっています。こちらもクリーニング時にエッジの確認をしましたが柔軟です。
オーディオ系のカタログは小難しい表現でいかに凄いもの高度なものであるかをアピールする傾向がありますが、ざっくり言うと
Mg-Cu添加超硬質軽合金:Mg-Cu系は2000番系のアルミ(=ジュラルミン)
サファイアに近い高度の厚膜:おそらくハードアルマイト処理
2000番系のアルミは安価な割に硬く機械的強度が必要な部品に使われます、2輪だとキャリパーサポートとか。ハードアルマイトは通常のアルマイトとは異なり簡単に削れては困る表面硬度が必要な箇所に施されます、2輪だとアルミスプロケットとかMTBではエアサスのインナーチューブなどに施されてます。
今回、クリーニングしたついでにユニットの組立ボルトに少しヤレがありましたので全てステンレスのキャップボルトに変更しました。使用ボルトサイズは
M3-10mm x 6
M5-10mm x 4
です。純正はスプリングワッシャー入りですが、ズッシンズッシン振動が出るような超大音量で聴くことはなく、せいぜい普通の音量+α程度で容易に緩みが出る場所ではなし、素材が伸縮する箇所でもないので必ずしも必要ではないと思います。スプリングワッシャーを入れる場合はスプリングワッシャー分の厚み考慮したネジ長にしないといけないし。ただし、ここに純正よりも長いボルトは決して使用しないこと、純正よりも長いボルトをネジ混むとボルトがマグネットを押し剥がしてマグネットずれを起こします。
スコーカー背面です。型番はMD-5Aです。バックキャビティがやや大きめです。ユニット単体で見るとフレームが薄く断面の処理が荒いのでNS-1000Mに比べるとチープな感じが否めないです。
バックキャビティの中はどうなっているかというと吸音材がぎっしり入っています。マグネットに貼っているテープは端子の接触防止に貼りました。この端子だけなぜかマグネットにやたら近いのです。
ツイーターです、型番はHD-3A。ゴールドのダイアフラムがとても綺麗です。3.6cm径でもちろんNS-1000Mよりもちょっと大きいです(NS-1000Mのツイーター径は3.0cm)。
このツイーターはEX-101やEX-102AVなどにも仕上げを変えて使われています。こちらもボルトをステンレスキャップに替えました。使用ボルトサイズは
M3-8mm x 3
M4-8mm x 3
です。14〜17cmクラスのEX-101やEX-102AVに使うくらいなのでX-IIIやDX-3やX-VやDX-5にもこれを使えばと思うのですが、X-III系やX-V系はもっと小さなダイアフラムのツイーターになっています。
ツイーター背面です。プレート裏のゴールドアルマイトが良い感じ、こちらの仕上げを前面にすればよかったのにと思うけど、ウーファーのフレームでこの仕上げはコストかかりそうです。
参考として、以下が前に記事にしたCORAL EX-101のツイーターです。これも3.6cm径なので同じダイアフラムかと。保護ネット内周の色付けと導線の接続方法が少し異なるくらいですか。
CORAL EX-101のツイーターの裏面です。型番はHD-12となっていますね。
DX-7はゴールドアルマイト仕上げのおかげか、どのユニットのフレームも腐食が全くないのですが、同じアルマイト仕上げでのLo-DのHS-11DやHS-33Dなどは腐食しまくってました。オクなどでも全く腐食のないユニットを見つけること自体が困難です。Lo-Dのユニットのアルマイト皮膜は弱かったのだろうかと(HS-11DやHS-33Dはシャンパンゴールドのアルマイトでしたが、アルミを染める色の濃さとアルマイト皮膜の厚さ(バリア層の厚さ)は直接関係ないです)。
エンクロージャーです。バスレフでサイズはX-VIIと全く同じ390mm x 710mm x 380mmで総重量もDX-7とX-VIIは同じ31kgです。もちろん、エンクロージャーもNS-1000Mよりもちょっと大きいです(NS-1000Mは375mm x 675mm x 326mm)。当時、オーディオショップでは各社スピーカーを壁面にぎっしり並べて積み上げて展示してましたので少し大きいというのは展示販売でもアドバンテージだったのでしょう。
エンクロージャーは、内部の補強も凝っていて非常に堅牢で重量もあります。ユニットは全て爪付きナットでボルト留めになっています。吸音材はフエルトでこれはDX-3やDX-5でも同様です。ウーファーの背面には定在波や共振の防止のためかスロープ状の板が組み込まれています(坂のようになっている吸音材の下にスロープ状の板があります)。
ネットワークです。クロスオーバーは450Hzと6kHzです。コイルは空芯ではなく四角の鉄棒が入っているタイプです。ウーファーには電解コン、スコーカーとツイーターにはフィルムコンでコーラルらしいネットワークです。能率の調整のためかセメント抵抗が載っています(ちなみにNS-1000Mのネットワークには抵抗はありません)。能率の調整の抵抗があるネットワークって流用しづらいので嫌いです(笑)。
というわけで、外観や構成からNS-1000Mを意識したことは容易にわかりますが、各部を細かく見ていくと発端のX-VIIから尋常じゃないほどNS-1000Mを強烈に意識していたことが想像できます。当時、ヤマハはX-VIIの出現に慌てたのだろうかというと、NS-1000MにX-VIIに対抗する何かをするよりもNS-590, NS-600, NS-890, NS-690IIIあたりに力を注いでたようで、どうもそちらの価格帯のライバル機が脅威だったのでは、と思います。
掃除も撮影も終わりましたので各ユニットを組み込んでいきます。このサイズのスピーカーが2つも部屋に横たわっていると非常に邪魔です(笑)。ウチに犬はいませんが床に大型犬が横たわってるとこんな感じなのでしょう。
せっかくなのでユニットのマウントボルトもステンのキャップボルトにしてみました。使用ボルトサイズは
ツイーター:M5-20mm x 4
スコーカー:M6-20mm x 4
ウーファー:M8-30mm x 4 (要スプリングワッシャー&純正ワッシャー)
です。ウーファーを留める際は純正のボルトについている黒いワッシャーを使います。普通のM8ワッシャーは外形が大きくて使えません。
ツイーター→スコーカー→ウーファーの順に組み込みます。
組み上げてしげしげと眺めると、各ユニットは立派なはずですが、フレームの端面や表面仕上げ、バッフル面、ロゴ周りなど、造りの素っ気なさがどうしても目についてしまうんですね。そのせいかどことなく安っぽさ感が否めません(愛用している方、ごめんなさい)。コーラル自体がユニット屋さんなので資金力や総合力で仕上げてくる大手メーカーの製品のようにはいかないのはしょうがないです。こういう細部をそれなりに仕上げると79800円で収まらないのも容易に想像できます。
で、はたと思いついたのです、「せっかくのゴールド仕上げのユニットだからもっと目立たせればよいのでは」と。簡単な話、子供やペットに攻撃されるなど使用上不都合がなければドームユニットの保護ネットを外してみるわけです。
これでどうでしょう?ゴールデン過ぎて少し悪趣味な感じもしますが(ゴールド仕上げのiPhoneを初めて見たときの感覚に近い)メカニカルな感じも出てカッチョいいです。
長くなりましたんで、音質については次回の記事で。
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