これまでマニアックな改造ネタが続きましたので、今回はユルめに(元)コレクション紹介。
70年代初めのテクニクスのSB-100、画像多めで紹介したいと思います。
って、十分にマニアックか…
これです。
もう見るからに年代モノって感じですね。
サランネットを装着すると、さらに年代モノ感はアップします!
オーディオの足跡さんによると、発売年は1971年。
ビンテージと読んでもよいのではないでしょうか、実に今から50年前のモデルですし。
このSB-100にはベースとなったモデルがあって、元はSB-1204、通称「Technics 1」と呼ばれるモデルです。12cmウーファーにホーンツイーターという、これまた豪華な構成でテクニクス製品の第1号機でもあります。そんな記念碑的モデルを1971年に改良して生まれたのがこのSB-100です。
丁度、日本のオーディオ業界とテクニクスがこれから勢いづくタイミングのモデルでもあります(当方は幼児なので、もちろんそんな記憶はありませんが、なんとなくそういう時代だろうと)。
このSB-100、希少なモデルというわけではなく、頻繁にオクで見かけますので、かなり売れたのでしょうね。当時、このサイズで19000〜23000円はかなり高価なものと思います…
SB-100の最も特徴的な点はこのアルミハードドームのツイーター
メカニカルでかっこ良いデザインです。
音質はさておき、このツイーターを眺めるだけでも価値があるんじゃないかと(と、ワタクシは思うわけです)。
ウーファーは12cmで凹型のクロスエッジです。
ウレタンエッジのような劣化の早い部品構成でないのも今に至っても中古が多く出回る理由ではないかと。また、なまじサイズが大きいと邪魔者扱いで捨てられやすいですが、小さいと「とりあえず押入れにでも入れとけ」みたいな感じで廃棄も免れやすいですし。
ユニットを取り出してみました。
まず、ウーファーから。
スチールのフレームにクロスエッジに紙コーンと見た目はごく普通のウーファーなんですが「脱ぐと凄いんです」の典型でひっくり返すとですね…
巨大なマグネット!
中央に圧抜きの穴があり、コーンを動かすと割と振幅は大きめにとられていますので、比較的大きな入力でガッツリ鳴らすことを前提にした設計かと思われます。まだまだこの時代、騒音には寛容でワタクシの記憶でも町内の大きなお兄ちゃんがステレオで歌謡曲をガンガン鳴らしてたのを普通に覚えてますし、近所の人も両親も騒音に怒る雰囲気もないという、そんな大らかな時代のものです。
そういう方向の設計ですので、ダンパーはこのサイズのユニットとしては非常に強靭で固めです。
硬化しているわけではないのです、ちなみにエッジは柔らかいです。
こういう設計はPA用などの大入力大音量に対応したユニットにありがちで、去年に買ったClassic Proの16cmウーファーなんてガッチガチに硬いダンパーです(それでも大入力を投入するといい具合に鳴るんですよ、これがまた)。
当時はこれで良しだったのでしょう。これが6〜7年後のSB-X01(当ブログの分解記事参照)になると逆にダンパーも(エッジも)柔らかい設計になり、小入力でもウーファーを積極的に動かす方向に変わりますのでなかなか興味深いです。
つぎにツイーターです。
前面の保護ネットは接着されていて容易に外すことはできません。外すと接着部周辺の塗装にダメージを与え、再塗装する羽目になるのは確実なので修理などの理由でもない限り外さない方がいいでしょう。一般に古いドームツイーターはボイスコイルなどへの導入部で腐食断線しがちですが、オクなどで流通する中古や他ブログでこのツイーターが断線しているものは見たことがないので、割と堅牢な造りなのでしょう。
マグネットはこのレベルのツイーターとしては普通のサイズですね。
この頃はドームツイーターのサイズをダイアフラム振動部の直径ではなくフレーム直径で表示するものが多々ありますので、これも「10cm DOME TWEETER」と印字されています。実際の振動板サイズは2.5cmくらいと思います。
ダイアフラム部の拡大です。
ドーム部一体式のタンジェンシャルエッジのアルミ製ハードドームです。この後、モデルチェンジされたSB-100Aではツイーターが変更され、エッジ部が別素材となり外観もやや簡素なデザインになります(コストダウンっぽい感じがしないでもないです)。個人的にこのツイーターんデザインがたまらなく好きです。
エンクロージャーです!
枠部分の削り込みの仕上げが当時らしい造形ですね。エンクロージャー素材は合板(ま、ベニヤ板ですな)で表面は突き板でニス仕上げになっています。当時の一般的な家具でありがちな仕上げですね。ニス仕上げのため、重いものや濡れたものを長い時間置きっ放しにすると跡になってしまうので取り扱いには注意を要するエンクロージャーです。
このエンクロージャー、なかなか凝った仕上げなのですが、このスピーカーのウイークポイントでもあります。
まず、絶対的に剛性が足りないのです。
9mm厚程度の薄い合板で内部の補強はなく、前面と後面にバッフルを取り付ける枠があるのみです。そのせいで小音量でもかなり箱鳴りがします。ついでに密閉型といいつつも、密閉度がいまひとつで密閉型本来の性能が出ていないと思われます。
エンクロージャーに補強を入れ、密閉度をあげれば音質はかなり改善すると思われますが、こういうビンテージものなので、音質はあえて追求せず、このまま動態保存すべきかと。
ターミナルはテクニクス独特の例のアレでしたが、当方の入手時は片方のツマミが欠損していたので、ターミナルは変更しています。
メーカー&モデルを示すプレートと最終チェックラベルに直筆で書かれた最終確認者のサインがカッコいい。
裏板はネジで止まっているだけでシーリングのパッキンもありません(ここが密閉度をさげている最大の原因かと)。なのでネジを外すと容易に外れます。
見ての通り、金魚綿系の吸音材がギッシリと詰め込まれています。いわゆるアコースティックエアサスペンションってやつで、この辺の設計思想は当時も昔も一緒ですね。
ネットワークは裏板にネジ止めされています。
クロスオーバーは5kHzで、ウーファー:12dB/oct、トゥイーター:18dB/octのカットになっています。見た感じ、割と高品位な部品構成でこの機種に対するテクニクスのこだわりみたいなものが感じられます。
さて、音質ですが、次回の記事で空気録音動画をアップ予定ですので、それを試聴していただければよいかなぁ、と。
以上、テクニクス・SB-100の紹介でしたが、当時の12cm小型スピーカーとしては、かなりのこだわりとコストがかけられている貴重なビンテージですので、持っている方は大事にしてくださいね。
実はワタクシ、こうしてブログの記事にしていますが、少し前に大型スピーカーを複数導入の場所確保のために手放してしまいました(手放すにあたって内部の状態確認でブログ用画像撮影と動作確認の意味合いで空気録音をしています)。
このモデルの先代となるTechnics 1はさらに贅沢な造りらしく、入手したいのですがなかなか巡り会えません。
Technics 1 (SB-1204)のウーファーとツイーターユニット
12PL50 + 5HH17
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