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VISONIK DAVID 50、分解とインプレ

2019/03/01 - VISONIK DAVID 50

鈍器系スピーカーを語るときに避けて通れないモデル、VISONIK DAVID 50です。かなり前にeBayで入手したものです。先ごろ修理復活したLo-DのHS-1のインプレを書く上でまずはコイツのインプレを書かないと説得力に欠けそうなので…

VISONIK DAVID 50の外観その1

時折、「VISONIK社」という表現を見かけますが、製造していた会社は西ドイツのスピーカー/音響機器製造メーカーのヘコ・ヘンネル社(HECO Hennel & Co)です。ベルリンの壁崩壊前ですので、西ドイツのメーカーでVISONIKは同社のブランド名です。今でもHECO自体は存在しますが、Webページを見ると、Magnat Audio-Produkteのブランドになっているようです。

構成は多くの鈍器系スピーカーと同じく、アルミダイキャストエンクロージャーにウーファー+ソフトドームツイーターです。

VISONIK DAVID 50の外観その2

他の10cmクラスの鈍器系スピーカーと比べるとやや小ぶりです。ウーファーのフレームとエンクロージャーのサイズ関係をご覧いただくとお分かりかと思いますが、キッツキツのサイズです。

DAVID 50には製造ロットで前面グリルの下部のエンブレムに違いがあるようで、「VISONIK DAVID」とだけあるもの、「VISONIK DAVID 50」で50が横書きのもの、50が縦書きのものと、当方が知っているだけで3種あります。それぞれの製造年などはわかりません。当方が持っているものは「VISONIK DAVID」のみのロット。画像検索した感じでは、50まで書かれたエンブレムのロットは古そうです。

VISONIK DAVID 50のエンブレム

背面のバックプレートにはこのスピーカーのスペックなどが凸文字で成形されています。

VISONIK DAVID 50の背面バックプレート

画像の通り、当方のDAVID 50はウーファーの色褪せもわずかで傷も少なく良好状態の個体ですが、「MADE IN W.-GERMANY」とあることから、少なくとも1990年以前のものです。

各部を細かく見ていきましょう…

まずウーファー、9.8cmのペーパーコーンのウーファーです

VISONIK DAVID 50のウーファー・前から

口径は10cmではなく9.8cmとの触れ込みですが、ま、実質10cmですね。フレームは薄いスチール製でセンターキャップサイズは普通ですね、エッジはラバー、今でも十分に柔らかさは保っています。ダンパーはかなり柔らかめです。

取り外して背面から

VISONIK DAVID 50のウーファー・後ろから

サイズを超越した低音を奏でるウーファーですが、FOSTEXのFW100/FW108やCORAL 4L-60、ダイヤトーンのDS-5Bのウーファーのようなゴツいアルミフレームではなく、拍子抜けするようなスチールのフレームです。マグネットは厚く大きめで厚みから想像するにボイスコイルのストロークはかなり大きく確保されているものと思われます。

次にツイーター、19mmのソフトドームです。

VISONIK DAVID 50のツイーター・前から

特に外観で特徴となる箇所はない普通のドームツイーターですが、多くの同カテゴリーのツイーターが25mmとしているところ、DAVID 50のものは19mmと小口径です。リード線を外部から引き込んでドーム本体を通っているものはVictor S-M5/S-M3同様に断線しやすい構造ですので、入手時は要注意かと思います。

ツイーターの背面です。

VISONIK DAVID 50のツイーター・後ろから

プレートはアルミ製、マグネットサイズはごく普通のサイズ。プレートの表面は表も裏も小さな点状のパターンが入っていますが、デザイン的な理由か音響的な理由かは不明です。

次にエンクロージャーの内部です。

まず吸音材の状態です、グラスウールがギッシリ詰まっています。

VISONIK DAVID 50の吸音材(グラスウール)

いわゆるアコースティック サスペンション方式で先のストロークの柔らかいウーファーとのマッチングで低いf0を絞り出す秘密の一つかと思います。ネットワークを撮影するためにグラスウールを引っ張り出しましたが、再度詰め込んだ後でウーファーがキレイに収まらずに難儀しました(無理にウーファーを押し込むと薄いフレームが曲がりエア漏れの原因になっていしまいます)。

グラスウールを取り出すとネットワークとご対面です

VISONIK DAVID 50のネットワーク

ネットワークはシンプルながら大口径のコイルと何やら高価そうなコンデンサの組み合わせです。コンデンサには「W&B」「VERLUST…」と書かれていますが詳細は不明です。クロスオーバーは1.9kHz、かなり低い周波数でクロスする設定でこれはDAVID 50の音質の決め手の一つかと思います(このカテゴリのスピーカーのクロスオーバーの多くは3kHz〜6kHzあたり)。

当方が唯一の難点と思っているグリルです。

VISONIK DAVID 50の前面グリルと枠

パンチングメタルのグリルを樹脂製の枠で嵌め込む仕組みですが、スピーカー2本の内、1本が脱着が非常にタイトなのです。これはおそらく個体差があるかと思います。脱着の際に樹脂製の枠が割れそうで…せめてアルミだとよいのですが。

さて、インプレ。

多くのサイトで語られている「大型スピーカーが鳴っているかと思ったら、その上に乗せているDAVID 50が鳴っていた」という逸話ですが、これはほぼ本当です。このサイズからは想像をできないような低音再生能力です。「ほぼ」と書いたのはさすがに38cmウーファーが出すような腹に響くような重低音は出ませんが、同時代のONKYO M55やPIONEERのS-X4などの20cmクラスのスピーカーと同程度以上に低音を体感します、きっちりとメンテナンスした絶好調のDIATONE DS-15Bに近い感じです。かといって小サイズから無理に低音を引き出し強調したブーミーな味付けではなく、明瞭で濃密な中高音再生で非常にバランスが良いです。ウーファーの動きを見ると元気一杯に動いているのが分かります。かなりの大音量で再生しても歪感もなく、高い解像度と定位感で再生します。いや、さすが、皆が高評価するのは納得の音質です。

この音質が鍵がどこにあるのかちょっと考えてみました。
・同クラス同カテゴリのスピーカーに比べ異例なほど低いクロスオーバー
・ダンパーが柔らかくてストロークが大きく非常によく動くウーファー
・これでもかとばかりにぎっしり詰められた吸音材
・よく練って設計されたであろうネットワーク
あたりではないかと思います。
結構な高額で取引されるスピーカーですが、そこそこの金額を出しても決して損はないかと思います。コレクターズアイテムとしても魅力的かと。

当方、今欲しいスピーカーは、DAVID 8000やDAVID 9000など。DAVID 50よりも大きな3ウェイを聞いてみたいのです。いったいどんな味付けがなされているのか、非常に興味ふかいです。日本では殆ど流通しておらず、eBay Germanyあたりで入手できそうですが、送料が壁ですな…

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VISONIK DAVID 50、分解とインプレ」への1件のフィードバック

UTO

50のとても興味深く詳しい解説ありがとうございます♪
…「VISONIK」シリーズ
DAVID5001 ,50,60,8001,9000
所有しております^ ^
当方鹿児島ですが、機会がございましたら観光がてら試聴へいらして下さい^ ^

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