ウーファーに問題を抱えたVictor ZERO-10F、今回はウーファーのレストアを行います。
前回の記事は以下です:
・Victor ZERO-10F、こだわりのミドルサイズ3ウェイ
まず、レストアの手順ですが、アルミ製のフレームに激しく錆が出ていますのでこれを除去して研磨、その後で自作のクロスエッジに貼り替えます。
1.アルミ製フレームの研磨
2.硬化したエッジを動画で紹介
3.自作クロスエッジの作成と貼り替え
エッジの交換よりも先にフレームの研磨を行います。なぜかというと、研磨でエッジにダメージを与える可能性が高いのとエッジのある状態で研磨した方が研磨で出るアルミ粉がダンパー側に落ちないからです。まず、アルミフレームの状態です。
ヘアライン仕上げのアルミフレームですが、かなりの腐食が生じていて見た目が汚いです。ただ、この手の腐食を完全に取り去るには表面を一皮剥く勢いで研磨しないと無理なので目立たない程度まで頑張ります。
ヘアライン仕上げなのでヘアライン方向へ真鍮のワイヤーホイールを当てればよいかというと、これが全然ダメです(笑)。表面を撫でているだけで腐食は全く取れません。
「だったら鋼のワイヤーホイールを使えば…」と考える方が多いと思いますが、鋼のワイヤーホイールでは固すぎて逆に削れすぎてしまうのです(妙な仕上がりになります、苦い経験済み・笑)。
そんなわけで地道にサンドペーパーで研磨するのみ!
このフレームのヘアラインの場合、#120〜#150くらいのサンドペーパーが丁度よい感じでした。研磨は非常に地道な作業、と同時に手がアルミ粉で激しく汚れるため画像を撮ることもなく、一心不乱に磨きました。
フレームの断面部は元々の仕上げが切りっぱなしの断面そのものでかなり荒いです。
この部分は万力でホールドした状態でヤスリで仕上げた方が早かったので、粗めのヤスリで研磨しました。
3日間ほど仕事の後に地道に磨いたんです、トータルで延べ丸一日くらい時間かかってます。
んで、研磨した結果がこちらです!
腐食が深い部分はどうしても黒ずみとなって残ってしまいますが、まぁまぁキレイな状態にはなりました。
いやほんと苦労しました、手はアルミで真っ黒になるし。フレームはキレイにはなったのですが、年月を経るとまた曇ったり腐食するけど、それはしょうがないか。
まずエッジを取り外します。幸いなことにラッカーシンナーで容易に緩む接着剤で取り付けられていたので簡単かつキレイに取り外すことができました。
エッジガスケットは画用紙程度の厚紙です。コストのかかったアルミフレームに対して随分と安っぽい仕上げです。そんな華奢なものなのに何のために貼り付けているかというと、ロール外周の形状を保持するためです。元のエッジガスケットは再利用できませんので後で黒の塩ビシートから切り抜いたものに変更します。
ここでパリパリになったエッジとはどんな状態なのか、動画を撮影してアップしましたのでご覧ください。
これでパリパリ感が伝わるかと。こうなってしまってはコーンは動くものの本来の音は出ません。まるでダンパーのような反力がありますので、特に小音量では低音の再生能力が著しく落ちます。
いつもの手法でクロスエッジを自作、今回は23cm口径なので液ゴムやや多めです。クロスエッジの自作については下記のページに詳しく記述していますので参考にしてください:
・スピーカーの自作エッジの作り方・永久保存・詳細版
・自作エッジのすすめ、自作エッジを使う理由
・TRIO LS-10、レストア作業・自作エッジで修復
液ゴム1回塗りの状態、もう1回塗って終了になります。
以下が完成した自作エッジ、今回もソフトでありながらしっかりとした成形でイイ感じでできました。
エッジの貼り付けですが、エッジとコーンの接着面には十分に接着剤を塗っていますが、今回は相手がセラミックコーンで硬くゴツゴツしているため、密閉をより確実にするため、接着剤でエッジとコーンの接着面をさらにシーリングします(画鋲の箱は俯せでエッジが接地しないよう単なる支えです)。
エッジガスケットは黒の塩ビシートで作成するのですが、正確な輪を切り取れるよう、ロータリー刃のサークルカッター(OLFA 186B)を導入しました(エッジもこれで切り抜けばよかった….)。
普通刃のサークルカッター自体は持っていてよく使いますがロータリー刃のサークルカッターは初めて。これは普通刃では切りにくい布や革やフエルトなど、主に手芸で重宝されるものです。
普通刃のサークルカッターよりも少々高いですが、はっきり言ってかなりよいです、普通刃のサークルカッターよりもキレイな円が簡単に切り抜けます。ただ、切り抜ける最大径が22cmまでというのが欠点(ZERO-10Fのエッジガスケットの口径は21.5cmなのでギリギリOKだった)。
というわけでエッジを貼り、エッジのガスケットも貼って完成したウーファーがこちらです。
作業は1記事内に収めていますが、ここまで1週間近くかかってます。自作エッジへの貼り替えは慣れた作業なので大したものではないですが、フレームの研磨は想定外に苦労しました。
続きは以下の記事になります。
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