前回の記事の続き・トリオ・LS-10のレストアです。
前回の記事は以下です:
今回はエッジの修復作業です。
エッジを自作される方にも参考になるよう、全作業を1記事にまとめていますので、ちょっと長いです。エッジの自作は以下の記事も参考にしていただくとよいかと、採寸や製図は下記の記事の方が詳しいです(リンクは別タブで開きます)。
では、作業開始。
まず古いエッジを取り除きます。
手で取り除けるもの優しく手で取り除きます。
次にコーンの裏側の縁に残ったエッジですが、これは採寸や新しいエッジの接着に大きく影響しますので接着剤のカスまでキレイに取り除く必要があります。
幸い、このユニットのエッジは接着剤とともに硬化してくっついていましたのでカサブタのように爪でカリカリと取れます。カッターの先の刃ではない部分で優しく引っ掻くように落としていくとキレイに簡単に取れました。
カッターの左側が古いエッジを取り除いた部分、右側が古いエッジがまだ残っている部分です。
フレーム側の古いエッジはカッターで思い切って削り取っていきます。
ここまでキレイにきっちり取り除きます(紙ガスケットは元々ありませんでした)。
取り除いたウレタンエッジのカスは紙に包んでゴミ箱へ。
耳垢みたいなのは古い接着剤です。
古いエッジを取り除いたら、次はノギスを使って各部の採寸です。
今回、ちと難儀したのはロールの太さです。
ガスケットとコーンの間は約12mm、一般に売られているバックアップ材の太さは8mm、10mm、13mmなのです。10mmのバックアップ材を使うとロールが細すぎ、13mmは太すぎ。カタログ画像などを見るとロール外周とフレームガスケットとの間はごくわずか(2mmほど)、これから導かれる元のロールの太さは、ほぼノギスでの計測値の12mmというところでしょう。
試しに、前に取り寄せたLS-10用と題した既成のウレタンエッジです…
ロールは10mm、これは細くて使えないです。
ロールが太くなるのはさほど問題になりませんが、細くなるのは問題。どういうことかというと、ロールが細い=本来の有効なストロークが確保できないのであります。また、このエッジで修復するとロール外周とフレームガスケットとの間が開きすぎ、細いエッジが頼りなくカッコ悪く見えるでしょう。たった2mmの違いですが、実際はかなり見栄えに影響します。
ついでに、やっぱり既成のウレタンエッジはコシが強くて流用もできないです(もしかして使えるかも、と思ったけど、もう買うのをやめよう)、18cmユニット用のエッジはこんなにコシは強くないです。エッジの硬さについては下記にまとめています。
ロール部に使うバックアップ材ですが、少し悩んだ末、13mmのバックアップ材の中心をわずかにズラして11mmの半円ロールを切り出して12mmロールのエッジのベースにすることにしました。
13mmのバックアップ切り出し用の自作ジグです。真ん中の穴と通すとジャスト真ん中でカット、切り出し中の穴を通すと1mm偏ったロールが切り出せるようジグを作りました。
バックアップ材の切り出しは、この画像のようにカッターの刃が斜めに入るようにするとスムーズに切れます。
バックアップ材の用意ができましたら、次にA4サイズの紙に製図して台紙にします(完成時に切り出しやすいよう、裏面にも同じ同心円を書いてます)。画像はすでに両面テープを貼った状態です。
切り出したバックアップ材とエッジ素材の布です。
エッジの素材は綿100%の薄手の布です(綿は濡れて乾くと縮むので、何度も洗濯を繰り返した中古布がよいです)。
両面テープの保護紙を少しずつ剥がしながらバックアップ材を台紙に貼っていきます。
このとき、決してバックアップ材を引っ張りながら貼ってはいけません。
バックアップ材を貼り終えましたら布を貼っていきます、出来上がりを左右する最重要局面です。
・引っ張りながら貼ってはいけません、あくまでフワっと且つシワがないよう貼ります。
・今回、布の突っ張りを少しでも防ぐために中央に切れ込みを入れています。
布が突っ張っていると液ゴムを塗った後で張力で布が浮き上がりキレイなロールができません。
今回、液ゴム乾燥時の浮き上がりを完全に防ぐため、自作エッジの新しい試みとして布の浮き上がり防止枠を作って試しました。
材料はダイソーで買ったPPシート
これをロータリーカッターで同じ幅で短冊状に切り出して、エッジのロールの外周と内周にピタリと合う円状の枠を作ります。
液ゴムを塗った後、乾燥待ち時に両面テープとの接着が弱まり布が浮き上がってくることがあるのですが、この枠で抑えて浮き上がりを完全に防ぐという技です。
この枠はサイズに合わせてテープ留めで円を作っていますので、今後、様々なサイズの自作エッジで使えます。
では、枠もできたことだし、液ゴム(ユタカの水性を使用しています)を塗っていきます。
今回は柔らかめのエッジですので、倍に薄めた液ゴムを1度塗りの後、様子見して判断します。
液ゴムを塗った後は天気も良いことだし、外で乾燥です。
ここで先ほどの枠が登場!
この画像のように液ゴム塗布後に枠を置き、その上に重しとして適当な板を置きました。
乾燥後、枠を外してチェック。
新しい試みの浮き上がり防止枠は思いのほか上手くいったようで実にキレイなロールです!
ここで硬さチェックです。
上の画像の左側のエッジの上にエッジと同じ小さなロールを作っています。これで硬さのチェックをするのです。
触ってみてフワっと柔らかいエッジで、これで硬さは十分なのでもう液ゴムは塗りません。
台紙から乾燥完了したエッジの切り出しを行います。
最初に台紙の裏面に同じサイズの同心円を書いていますので、これに沿ってハサミで切り抜くだけ。
水に数十秒ほどさらして両面テープの接着をゆるめて台紙を剥がし、バックアップ材を取り除けば、自作エッジの完成です!
オマケ作業:
今回、コーンとセンターキャップが若干色褪せていて、LS-10特有の精悍な外観をスポイルしてしまうので、ごくわずかですが、エアブラシで薄吹きして着色しました。
リブの部分も紙質なのでコーン同様に塗料が浸透します。
完成した自作エッジを貼ってウーファーのレストア完了です!
いやはや、かっこいいウーファーだなぁ。
次の記事は以下の各ユニットの整備であります!
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「TRIO LS-10、レストア作業・自作エッジで修復」への1件のフィードバック
すごい作業ですね。私はとても自作エッジなんて作製できませんし、既製品エッジでの張替も自信ありません。センター合わせができる自信もありません。
しかし最近のウレタンエッジは音は良いのかも知れませんが、耐久性はダメですね。
私はONKYO U8000という1970年代の当時憧れたスピーカーをヤフオクで落札し、スピーカーやネットワークを取り除き、レストア+BOX内部補強をして使用しています。
こんな古いSPですがウーハーのエッジは今もまったく問題ないです。この頃のエッジはいいー。
昔はフォスやコーラルの単品ユニットを購入し随分自作をしましたが、どれも数年経つとエッジがダメになりましたね。
もう少し耐久性も考えて製品化してほしいです。